医療法人財団 同潤会 富士見病院介護医療院
作成日 2018年5月1日
2020年4月1日 改訂
2022年4月1日 改訂
2024年4月1日 改訂
1.身体拘束廃止に関する理念
身体拘束は、利用者の生活の自由を制限することであり、利用者の尊厳ある生活を阻むものです。当施設では、利用者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人ひとりが身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識をもち、身体拘束をしないケアの実施に努めます。
【介護保険指定基準の身体的拘束禁止規定】
「サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない。」
●緊急・やむを得ない場合の例外三原則
利用者個々の、心身の状況を勘案し、疾病・障害を理解した上で身体拘束を行わないケアの提供をすることが原則です。
例外的に以下3つの要素の全てを満たす状態にある場合は、必要最低限の身体拘束を行うことがあります。
① 切迫性:利用者本人又は、他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる緊急性が著しく高いこと。
② 非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替法がないこと。
③ 一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。
※身体的拘束を行う場合には、以上の三つの要件を全て満たすことが必要です。
2.身体拘束廃止に向けての基本方針
⑴ 身体拘束の原則禁止
当施設においては、原則として身体拘束及びその行動制限を禁止します。
【介護保険指定基準に於いて身体拘束禁止の対象となる具体的な行為】
- ● 徘徊しないように、車いすや椅子・ベッドに体幹や四肢を紐等で縛る。
- ● 転落しないように、ベッドに体幹や四肢を紐等で縛る。
- ● 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- ● 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢を紐等で縛る。
- ● 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないよう手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- ● 車椅子・椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルを付ける。
- ● 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
- ● 脱衣やオムツ外しを制限する為に、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- ● 他人への迷惑行為を防ぐ為に、ベッド等に体幹や四肢を紐等で縛る。
- ● 行動を落ち着かせる為に、向精神薬を過剰に服用させる。
- ● 自分の意志で開けることのできない居室等に隔離する。
⑵ やむを得ず身体拘束を行う場合
本人又は他の利用者の生命又は身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性・非代替性・一時性の3要件の全てを満たした場合のみ、本人・家族への説明同意を得て行います。
また、身体拘束を行った場合は、施設医師をはじめ身体拘束適正化委員担当者 (リスク委員担当者)を中心に十分な観察を行うとともに、その行う処遇の質の評価及び経過記録を行い、できるだけ早期に拘束を解除すべく努力します。
⑶ その他の日常ケアにおける基本方針
身体的拘束を行う必要性を生じさせないために、日常的に以下のことに取り組みます。
- ● 利用者主体の行動、尊厳ある生活に努めます。
- ● 言葉や応対などで、利用者の精神的な自由を妨げないよう努めます。
- ● 利用者の思いをくみとり、利用者の意向に沿ったサービスを提供し、多職種協働で個々に応じた丁寧な対応をします。
- ● 利用者の安全を確保する観点から、利用者の自由(身体的・精神的)を安易に妨げるような行為を行いません。
- ● 「やむを得ない」と拘束に該当する行為を行っていないか、常に振り返りながら利用者に主体的な生活をしていただける様に努めます。
3.施設内の組織に関する事項
● 身体拘束適正化委員会の設置
当施設では、身体的拘束適正化検討委員会(指定基準省令第183条の規定に基づく身体拘束の適正化のための対策を検討する委員会)を設置し、3ヶ月に1回以上開催します。
① 設置目的
- ● 施設内での身体拘束廃止に向けて現状把握及び改善についての検討をします。
- ● 身体拘束を実施せざるを得ない場合の検討をします。
- ● 身体拘束を実施した場合の解除の検討をします。
- ● 身体拘束廃止に関する職員全体への指導をします。
※施設が報告、改善の為の方策を定め周知徹底する目的は、身体拘束適正化について施設全体で情報共有し、今後の再発防止につなげるためのものであり 従業員の懲罰を目的としたものではありません。
② 身体拘束廃止委員会の構成員
- ア)管理者
- イ)看護部長
- ウ)主治医
- エ)看護職員
- オ)生活相談員
- カ)介護支援専門員
- キ)機能訓練指導員
- ク)介護職員
- コ)栄養士
※この委員会の責任者は施設長とし、その時参加可能な委員で構成する。
4.緊急やむを得ず身体的拘束を行わざるを得ない場合の対応
⑴ 3要件の確認
- ● 切迫性(利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと)
- ● 非代替性(身体的拘束を行う以外に代替する介護方法がないこと)
- ● 一時性(身体的拘束が一時的なものであること
⑵ 要件合致確認
利用者の態様を踏まえ身体的拘束適正化委員会が必要性を判断した場合、限定した範囲で身体的拘束を実施することとしますが、拘束の実施後も日々の態様等を参考にして同委員会で定期的に再検討し解除へ向けて取り組みます。
⑶ 記録等
緊急やむを得ず身体的拘束を行わざるを得ない場合、次の項目について具体的にご本人・ご家族等へ説明し書面で確認を得ます。
- ● 束が必要となる理由(個別の状況)
- ● 拘束の方法(場所、行為〔部位・内容〕)
- ● 拘束の時間帯及び時間
- ● 特記すべき心身の状況
- ● 拘束開始及び解除の予定(※特に解除予定を記載します)
5.身体拘束廃止に向けた各職種の役割
身体拘束の廃止のために、各職種の専門性に基づくアプローチから、チームケアを行うことを基本とし、それぞれの果たすべき役割に責任をもって対応します。
〔管理者〕
- ● 身体拘束における諸課題等の最高責任者
〔主治医〕
- ● 施設内での身体拘束廃止に向けての現状把握及び改善について検討、管理運営
- ● 身体拘束を実施せざるを得ない場合の検討、管理運営
- ● 身体拘束を実施した場合の解除の検討、管理運営
- ● 身体拘束廃止に関する職員全体への指導、管理運営
〔看護部長〕
- ● 施設内での身体拘束廃止に向けての現状把握及び改善についての検討、 管理運営
- ● 身体拘束を実施せざるを得ない場合の検討、管理運営
- ● 身体拘束を実施した場合の解除の検討、管理運営
- ● 身体拘束廃止に関する職員全体への指導、管理運営
〔介護職員〕
- ● 拘束がもたらす弊害を正確に認識する
- ● 利用者の尊厳を理解する
- ● 利用者の疾病、障害等による行動特性の理解
- ● 利用者個々の心身の状態を把握し基本的ケアに努める
- ● 利用者とのコミュニケ-ションを十分にとる
- ● 記録は正確かつ丁寧に記録する
〔看護職員〕
- ● 医師との連携
- ● 施設における医療行為の範囲を整備
- ● 重度化する利用者の状態観察
- ● 記録の整備
〔リハビリ職員〕
- ● 機能面からの専門的指導・助言
- ● 重度化する利用者の状態観察
- ● 記録の整備
〔生活相談員・介護支援専門員〕
- ● 身体拘束廃止に向けた職員教育
- ● 医療機関、家族との連絡調整
- ● 家族の意向に沿ったケアの確立
- ● 施設のハ-ド、ソフト面の改善
- ● チ-ムケアの確立
- ● 記録の整備
〔栄養士〕
- ● 経鼻、経管栄養から経口への取り組みとマネジメント
- ● 利用者の状態に応じた食事の工夫
- ● 記録の整備
6.身体拘束廃止、改善のための職員教育・研修
介護に携わる全ての従業員に対して、身体拘束廃止と人権を尊重したケアの励行を図り、職員教育を行います。
① 定期的な教育・研修(年2回)の実施
② 新任者に対する身体拘束廃止、改善のための研修を実施します。
③ 新規採用時に研修を実施します。
7.この指針の閲覧について
当施設での身体拘束廃止に関する指針は求めに応じて、いつでも利用者及び家族が自由に閲覧をできるようにします。